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コラム
「目標管理の新しいノウハウとしてのOKR」
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2020年11月19日
主任講師・コンサルタント
山田 豊文
1.目標管理の普及と進化
OKRの注目が高まっています。OKRとはObjectives and Key Resultsの略で、定性的な目標を設定して、その目標を達成する上で重要な結果を把握する手法であり、目標管理の新しいノウハウと捉えることができます。目標管理は20世紀最大の経営学者と評価されているドラッカーが、その重要性を主張し始めました。ドラッカーは代表的な著作の1つ「現代の経営」において、企業で働く人材の意欲を高め、能力を向上させる上での目標管理の重要性を説明しています。その後、目標管理はアメリカや日本といった先進国で普及して、多くの企業で導入されました。目標管理を導入して人材育成や組織の活性化といった効果に結びつけるためには、目標を適切に設定することが必要です。
しかし日本では1990年代後半から2000年代にかけて目標管理が適切に活用されていない事例が散見されました。この時期はバブル崩壊の後遺症から、日本社会に閉塞感が漂っていました。閉塞感を打破するために、多くの企業は成果主義人事制度を導入して、1人1人の成果を把握するための手法として目標管理を使いました。しかし、安直に個人の裁量で成果を求めることを許容した企業では、目標を適切に設定することができずに形骸化しました。その後、目標管理において、目標を適切に設定するために進化したノウハウとしてOKRがアメリカで開発され、日本に入ってきました。
2.OKRの特徴と活用方法
OKRの特徴は定性的な目標の設定と結果指標の選定を組み合わせて行うことです。定性的な目標には、厳密には「目的」と呼ぶことが相応しい表現で設定します。次に「目的」に相当する定性的な目標の達成状況を判断する上で、重要な指標を選定して、その実績を追跡していくことを通じて活用していきます。
例えば課長が、自らの課でワーク・エンゲイジメント(組織の活性化)を実現することを定性的な目標として設定したとします。次に、定性的な目標の達成状況を把握するために課の残業時間、情意考課(業務に対する取り組み姿勢の考課)の結果を把握することが考えられます。ワーク・エンゲイジメント(組織の活性化)は、一般的に業務の生産性と課員の職場満足度を両立させることで達成することができます。課の残業時間を減少させることができれば、業務の生産性は向上していることになります。また課員の情意考課の結果を向上させることができれば、職場満足度は向上しているはずです。
このようにOKRでは、定性的な目標と目標達成上の重要な結果指標を組み合わせて活用することが基本です。部や課といった組織単位でOKRを活用することができますし、組織のメンバー1人1人が個人単位でOKRを活用することもできます。基本的には組織単位でOKRを活用して、それを組織のメンバーに浸透させるために、個人単位のOKRを活用することが期待されます。
3.OKRの活用に関する展望
OKRの注目が高まっている理由は2つあります。1つはOKR活用の先進事例としてグーグルやヤフーなどの優良企業が紹介されていることです。もう1つはテレワークの必要性が高まっている環境下、ジョブ型雇用制度への転換が期待されていることです。テレワークを定着させるためには、多くの日本の企業はメンバーシップ型雇用制度をジョブ型雇用制度に転換することが求められています。テレワークを効果的に進めるためには、1人1人の担当業務の範囲が曖昧なメンバーシップ型雇用制度よりも、担当業務を明確に切り分けるジョブ型雇用制度が適しています。そして1人1人が担当業務を成果に結びつけるには、目標管理を活用することが考えられます。そのためテレワークの普及に伴い、ジョブ型雇用制度に移行する企業が増えることにより、目標管理のノウハウとしてOKRの導入が増加することが想定されます。
OKRを効果的に活用するには、成果主義人事制度での目標管理が形骸化した教訓を踏まえて、個人の裁量で成果を求めることを許容せずに、組織単位でのOKRの活用を先行させるべきです。そして組織単位のOKRを組織のメンバーに浸透させるために、個人単位のOKRを活用してこそ、目標管理の新しいノウハウであるOKRの効果を高めることができます。
以上