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コラム

「インフレにおけるブランドの重要性 」

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2023年4月3日

主任講師・コンサルタント

山田 豊文

◆インフレの影響と対策

 3月に鉄道各社がダイヤ改正に伴って運賃を値上げしました。インフレの影響で旅費交通費以外にも様々な費用が増加しています。インフレの状況で利益を確保するには、自社の商品やサービスを値上げすることが考えられます。鉄道のように必需性が高い商品やサービスの値上げは顧客から受け入れられやすい傾向があります。しかし業界によって、また企業によって商品やサービスの値上げを顧客に受け入れてもらいにくいことがあります。
 インフレ時に自社の商品やサービスの値上げを顧客に受け入れてもらうためにはブランドが重要です。ブランドは顧客にとっての商品やサービスに対する信用、または企業自体に対する信用と捉えることができます。顧客が信用している状態が、顧客からブランドが認められていることであり、ブランドとして確立していることになります。ブランドが確立していることは、顧客に高い付加価値を提供していることの証であり、継続的で優先的な利用や購入に結びつきます。
 ブランドを確立するための取り組みは、消費者向けのBtoCと企業向けのBtoBでは異なります。BtoCでは商品やサービスをブランドとして確立することを優先して取り組み、その結果として企業自体のブランドが確立することになります。一方、BtoBでは企業自体のブランドの確立を優先して取り組みことが考えられます。

◆ブランドとブランディングの関係

 ブランドがインフレ対策として貢献するためには、日頃からブランドの魅力度を高めるための活動を地道に継続的に進めることが必要です。こうしたブランドの魅力度を継続的に高めるための活動はブランディングと呼ばれます。ブランドとブランディングの関係は市場(マーケット)とマーケティングの関係と同じように捉えることができます。マーケティングは市場を確立して拡大していくための活動であり、ブランディングはブランドを確立して魅力度を高めていくための活動です。
 ブランディングによって顧客から見たブランドの魅力度を高めることができれば、インフレ時の値上げに加えて、競合先との差別化に結びつきます。差別化とは業界内の競争優位を築くための基本的な戦略の1つです。基本的な戦略には差別化、コスト優位、集中の3つがあります。差別化とは、競合先の同業他社には無い独自の価値を提供できることであり、顧客からの信用の源泉になります。
 ブランディングによる差別化の実例にコーヒーショップのスターバックスがあります。スターバックスは差別化によって、ロイヤリティが高い顧客を数多く獲得できています。ロイヤリティが高い顧客は、スターバックスのブランドを魅力的であると捉えているはずです。インフレの環境下で、もしスターバックスが値上げをしても、ロイヤリティが高い顧客が利用し続けることが想定されます。

◆ブランディングの進め方

 ブランディングを進めるにはアウターブランディングとインナーブランディングの両方が必要であり、優先すべきなのはアウターブランディングです。アウターブランディングの対象は顧客と社外の人材です。顧客に高い付加価値の提供を認めてもらうこと、社外の人材に良い印象を持ってもらい入社意欲に結びつけることがアウターブランディングです。アウターブランディングのために、ブランドの意義を社内で浸透させるための活動がインナーブランディングです。
 ブランドの調査などを行っているインターブランドジャパンはブランディングの進め方が優れている企業を毎年、表彰しています。昨年は味の素が最高賞を受賞しました。受賞のためにはアウターブランディングを効果的に進めることが必要であり、タグラインが重要です。タグラインとはブランディングの目指している状態や企業の存在意義を表現するために使われるキャッチフレーズのことです。味の素のタグラインは「Eat Well,Live Well」です。このタグラインから、食べることの重要性、顧客の生活を改善することへの貢献意欲を確認することができます。
 インフレが続く環境においては、各社がタグラインの作成を含めてブランディングを効果的に進めることで、ブランドの魅力度を高めることが期待されます。

以上

■コラム「インフレにおけるブランドの重要性」