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コラム
「新卒と中途採用の共通点と違い」
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2024年2月1日
主任講師・コンサルタント
山田 豊文
◆採用活動の進め方
企業を取り巻く人材採用の環境は厳しい状況が続いています。昨年1月時点の全国有効求人倍率は1.35倍と高く、その後も1.30倍前後の水準で推移しています。仕事の場を求める人材にとっては好ましい環境ですが、求人ニーズを持っている企業にとっては採用活動の進め方を見直す必要性が高まっています。
採用活動の基本的な進め方は新卒と中途採用において共通です。人材要件の明確化、求人情報の開示、応募の受け付け、書類選考、面接での人選、内定連絡と意向確認、入社手続きの流れで進めていきます。この採用活動の進め方では応募者人数と入社率の2つの指標が重要です。要件に適った人材を採用するためには一定以上の応募者人数が必要です。応募者人数が増えることで選択肢が広がって、優秀な人材を採用しやすくなります。また内定連絡と意向確認では辞退を減らして、入社率を高めることによって必要な人数を確保しやすくなります。
応募者人数を増やして入社率を高めるには、企業の魅力度を高めることが必要です。魅力度が高い企業は多くの応募者人数、高い入社率を実現しやすいことになります。企業の魅力度は様々な面から捉えることができますが、社会人の経験が無い新卒にとっては企業の知名度が魅力度に直結する傾向があります。
◆中途採用における重要事項
中途採用の場合は新卒と異なる傾向があります。中途採用の候補者は経験に基づいて企業に関する一定の知識を持っています。そのため新卒ほどは企業の知名度を重視しない傾向があります。企業の規模についても、中小企業よりも大企業を選ぶ傾向も新卒ほどではなくなります。
そのかわりに中途採用の候補者は知名度や企業規模といった表面的な情報ではなく、企業の本質に迫る情報に関する問題意識を持っています。中途採用をする企業側は、転職を考えている人材、つまり中途採用の候補者が持っている問題意識に応えることができるように準備を行うことが必要になります。
具体的には中途採用の候補となりうる人材の要件、入社後の業務の進め方などを開示することが期待されます。こうした期待を満たすためには、労働局での求人票を作成するための情報だけでは十分ではありません。そのため自社にとって相応しい人材を中途採用するために必要となる情報を開示することにおいて、周到な準備が必要です。情報開示以外には書類選考、面接での人選についても自社なりの考え方を明確にしておくべきです。中途採用のために必要となる準備は人事部門だけで進めるのではなく、現業部門、特に現業部門の管理職に協力を要請すべきです。
◆新卒採用の難しさ
新卒の採用には中途採用とは異なる難しさがあります。中途採用の場合は採用担当者と候補人材が同じ世代になる可能性があります。同じ世代同士であれば、物事を考える場合の基礎となる価値観が共通している可能性が高く、双方の理解が進みやすくなります。一方、新卒を採用する場合、採用担当者が年上であり、候補人材と世代が異なる可能性が高くなります。世代が異なると価値観が共通していないことなどから、交互に理解が進みにくく、思惑のズレが発生しやすくなります。特に近年の若い世代はZ世代と呼ばれ、これ迄の世代とは異なる価値観を持っていると認識されています。新卒世代の価値観に考慮しつつ企業の魅力度を伝えていくことが必要不可欠です。
こうした価値観の違いを克服することなどが、新卒採用の難しさになります。価値観の違いが克服できないと、入社後の早期退職者を増やしてしまうことにもなりかねません。新卒の採用に成功して、入社後の職場定着にも成功するかどうかは不透明です。インターンシップやリクルーター制度を活用することは、適切な人材を採用すること、職場定着の人数を増やすことにおいて、一定の効果があります。そのためインターンシップとリクルーター制度を導入していない企業は、その必要性を再検討することが期待されます。
以上