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コラム

「人事部門と現業部門管理職の連携」

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2024年9月26日

主任講師・コンサルタント

山田 豊文

◆転職者の復帰願望

 朝日新聞が「転職者の3割以上が以前、在籍していた会社に復帰したいと考えたことがある」という記事を9月2日に掲載しました。情報源は就職情報会社のマイナビが7月に実施した調査です。マイナビは20歳代から50歳代の年齢層、従業員3人以上の企業に勤務している1005人の転職者を対象に調査を実施しました。質問項目の1つに「過去に退職した企業に戻りたいと思ったことがあるか」であり、32.9%の転職者が「思ったことがある」と回答しています。
 転職成功の証の1つに職場定着があります。以前の職場に復帰したいという願望を3割以上の転職者が持っていることは、職場定着に課題があると判断することができます。転職後、新しい職場で長く働いて貢献することを通じて定着したいという意欲があれば、以前の職場に復帰したいとは考えないからです。
 職場定着に課題がある場合、様々な理由があることが想定されます。想定できる理由には、職場満足度が高くないこと、あるいは一時的に満足度が高くても低下していることがあります。そのため職場満足度を向上させることができれば、職場定着の課題を解決することに結びつきます。

◆職場満足度向上の条件

 職場満足度の向上を実現するための条件は5つあります。1つ目は業務計画の立案と情報共有です。月次単位などの業務計画を立案して、その過程で職場の構成員1人1人の事情を反映すること、さらに事情の反映を含めた情報が共有されることです。
 2つ目は勤務時間管理と分担調整です。働き改革では長時間勤務の是正が期待されますが、勤務時間管理と分担調整は長時間勤務の是正に結びつきます。
 3つ目は業務の指示と手順の適正化です。職場全体の業務を円滑に遂行するためには管理職の指示が適切であること、その結果として的確な手順で業務が進められることが必要です。
 4つ目は職場における協力関係です。職場の構成員の1人が対応できない過大な業務量を抱えている場合は、他の構成員の協力が必要不可欠です。
 5つ目は適切な制度や規則の整備です。人事考課制度や就業規則などが職場満足度に一定以上の影響を及ぼします。5つ目の適切な制度や規則の整備は人事部門の役割ですが、1つ目から4つ目の条件は、現業部門の管理職次第という側面を持っています。

◆現業部門管理職の役割

 日本ではアメリカと異なり職場定着が重要です。9月14日の日本経済新聞に掲載された「くらしの数字考」によるとアメリカでは転職回数が平均11.7回、一方、日本は平均2.2回です。そして平均勤続年数はアメリカの4.1年に対して、日本は12.3年と3倍になっています。こうした数字から、日本では現業部門の管理職が職場満足度を高めて職場定着を促進することの重要性が確認できます。
 ただし職場満足度向上の5つ目の条件に、適切な制度や規則の整備があることから人事部門と現業部門の管理職が連携することが期待されます。新しい人材を採用する場合には、人材要件を明確にすること、候補者を面接して最適人材を選定することが必要です。人材要件の明確化、面接による最適人材の選定では窓口としての人事部門と、現業部門の管理職が連携すべきです。人材要件の明確化、面接による最適人材の選定は、現業部門の管理職が中心となって進めることになるため、現業部門の管理職の役割は重要です。
 昨今の人材確保が難しい状況下では、現業部門の管理職が役割を果たしつつ、人事部門と連携することが期待されます。

以上

■コラム「人事部門と現業部門管理職の連携」