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コラム
「人材育成による組織活性化」
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2025年2月3日
主任講師・コンサルタント
山田 豊文
◆生産性向上のための人材育成
昨年12月23日に内閣府が国民経済計算の年次推計を発表しました。発表内容から2023年の日本の1人当たり名目国内総生産(GDP)は3万3,849ドルであり、2022年の実績を下回ったことが確認されました。2023年実績において日本の1人当たりGDPは世界22位であり、初めて韓国を下回りました。また日本よりも1人当たりGDPが高い国は全てOECD(経済協力開発機構)の加盟国です。OECDの中心的な存在であるG7、主要7カ国ではイタリアを下回っており2年連続での最下位です。
GDPは国全体の付加価値を示すのに対して、1人当たりGDPは生産性を示す指標です。GDPにおいて日本は世界4位ですが、生産性である1人当たりGDPは22位と物足りないことから、生産性向上が期待されます。
GDPを高めるための方法には、国としての経済政策、技術革新などがあります。経済政策や技術革新は生産性向上に貢献しますが、それ以外に生産性向上の方法には人材育成があります。人材育成は全ての企業のみならず、公的な組織にとっても共通することから、生産性向上における最も身近な方法です。
◆人材育成の要素
生産性向上を目指して人材育成に取り組むために行動科学を活用できます。行動科学は1970年代にアメリカで開発され、日本に入ってきました。行動科学は幅広く活用することができることから、人材育成の手法であるコーチングを行動科学の知見を踏まえて位置づけることができます。
行動科学では人材育成を能力と意欲の2つの要素で把握します。能力が高く意欲も高い、2つの要素が両立できた状態を人材育成の実現と捉えます。行動科学では、能力を知識、経験、技能で、意欲を興味、責任感、自信で把握します。
コーチングは意欲を高めること、つまり動機づけを重視している手法として位置づけることができます。人材育成のためには意欲を高めることだけではなく、能力を高めることが必要不可欠です。能力を高めるにはOJTや集合研修などの取り組みを組み合わせることが必要です。
そして能力と意欲には相互関係があります。意欲が高めれば能力は高まりやすくなります。また能力が高まることで意欲が向上します。このような相互関係を理解した上で人材育成には組織的に取り組むことが期待されます。
◆組織活性化の実現
人材育成を組織的に取り組むには現業部門の管理職、人事部門のスタッフ、経営者が協力することが必要です。職場でのOJTは管理職、集合研修は人事部門のスタッフが重要な役割を果たします。人材育成に継続して取り組むには経営者による予算確保などの環境整備も必要です。このように組織的に人材育成に取り組むことにより生産性を高めることができれば、組織活性化にも結びつきます。
組織活性化は生産性と職場満足度の両方が高い状態と捉えることができます。生産性と職場満足度の両方が高い状態はワークエンゲイジメントと呼ばれています。組織活性化を実現するためには生産性と職場満足度の関係を理解することが重要です。
人材育成を通じて生産性が高まることによって、担当業務に対する手応えを実感できることになり、結果として職場満足度が高くなります。また職場満足度が高くなることで1人1人のメンバーの意欲が高まります。意欲の向上は人材育成に結びつき、結果として生産性が高まることになります。
日本国内の企業や公的な組織が人材育成によって生産性を高めて、そして組織活性化を実現することが期待されます。
以上