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コラム

「IT人材の転職とデジタル化の成否」

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2022年1月7日

主任講師・コンサルタント

山田 豊文

◆IT人材の様々な業界への転職

 IT業界の人材(以下、IT人材)の転職が増加しています。日本経済新聞の調査結果ではIT人材の転職実績は昨年4月から6月には前年同期比の1.4倍と増加し始めており、感染症蔓延前の2019年同期と比較しても増加しています。特徴はIT業界から他の業界に対する転職が増加していることです。IT人材の転職先は業界別の構成比ではコンサルティング業界が最も多く22.1%、次いでサービス・アウトソーシング業界が11.2%、消費財・総合商社が7.7%、人材・教育業界が7.0%、金融業界が6.7%と続いています。在籍時の貢献に自負を持つ人材は賞与受け取り後に転職するため、年末から年始にか<けて一定の転職発生が予想されます。
 IT人材の転職が増加している理由はDX(デジタルトランスフォーメーション)を中心としたデジタル化に取り組みたいというニーズにあります。DXなどのデジタル化にはIT活用が必要であるため、様々な業界の企業がIT人材を自社で囲い込もうとしています。

◆デジタル化のための内製化

 日本企業は海外よりデジタル化が遅れていると言われています。理由の1つとしてIT人材がIT業界に集中しすぎていることが指摘されています。情報処理進機構によると、アメリカのIT人材はITを利用するユーザー企業の業界とIT業界に所属している割合が60対40程度です。一方、日本は30対70とIT業界へのIT人材の集中が顕著です。こうした傾向からIT人材の別の業界への転職はある程度、必然と考えることができます。
 IT人材がIT業界に集中していることから、日本ではシステム開発においてユーザー企業はIT企業に依存しすぎる傾向があります。しかしデジタル化に積極的に取り組もうとしている企業はシステムの内製化を志向しており、既に複数の事例が確認できます。日清食品は既に商品データベースの内製化に成功しています。小林製薬はIT人材を倍増してドラッグストア向け販売データ分析などのシステムの内製化を計画しています。良品計画は昨年9月にEC・デジタルサービス部を設置して、IT人材を100人規模で採用する計画を立案しています。
 今後もデジタル化の成功を目指してIT人材の増員を計画するユーザー企業が増えることで、多くのIT人材が様々な業界に転職することが予想されます。

◆成否を握る転職者の活用

 日本企業がデジタル化に成功するためには、IT人材を活用することが期待されます。既存の社員で内製化に成功した日清食品は経済産業省からDX銘柄2020、DX注目企業2021に選ばれた先進企業の1社です。多くの一般的な日本企業はIT人材を転職者として迎え入れて活用することを考えています。そのためには転職者であるIT人材のノウハウを組織的に活用する取り組みが必要です。
 情報処理推進機構が昨年10月に発表した調査では、アメリカでは80%以上の企業が社員のITリテラシーレベルを <認識・把握しています。日本では39.8%の企業しか認識・把握していません。この調査結果から優れたIT人材を転職者として迎え入れても、既存の社員のITリテラシーが不十分であることから、IT人材のノウハウを活用できずにデジタル化が頓挫することが懸念されます。
 デジタル化を成功に導くには、既存の社員のITリテラシーを認識・把握した上でIT人材を組織的に活用することが必要です。ITリテラシーが不十分な場合は経営者、現業の管理職、人事などのスタッフ部門が協力して既存の社員のITリテラシーを向上させながらデジタル化に取り組むことが期待されます。

以上

■コラム「IT人材の転職とデジタル化の成否」