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コラム
「即戦力人材の採用と定着」
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2024年8月7日
主任講師・コンサルタント
山田 豊文
◆中途採用重視の傾向
日本経済新聞によると今年の夏のボーナスは全業種の約8割に相当する26業種で前年実績を上回りました。注目すべき事項には従業員300人未満の企業で前年対比の伸び率が約8%と2002年以降で最高となったことがあります。こうしたボーナス支給額増加の理由には人手不足の解消を目指していることがあります。
人手不足の解消については中途採用重視の傾向があります。日本経済新聞が今年4月に実施した採用計画調査では中途採用の構成比は過去最高の43%になっています。前年の構成比が37%であったため6ポイントの増加です。新卒採用中心の人員確保からの転換点として捉えるべきであり、中途採用が補充要員ではなく、経営の中核を担うことが期待され始めている証でもあります。日本経済新聞の調査には2千社以上が回答していますが、中途採用人数を計画している企業は約54%に相当する1210社になっています。また計画人数は前年調査結果から15%増加した12万6300人です。
また大手人材紹介会社も中途採用重視の傾向を認識しています。その根拠は、これ迄、多くの企業がその都度、行っていた中途採用を計画的に進めるようになってきていることにあります。
◆即戦力人材の採用と活用
中途採用への積極的な取り組み事例はIT分野において確認できます。IT業界では顧客企業のデジタル化に対する旺盛なニーズを充足させるために、人手不足を解消しょうとしています。日本IBMグループでは昨年実績の約70%増の1217人を中途採用する計画を持っています。日立製作所は昨年実績の約29%増の670人を中途採用することを計画しています。日立製作所は中途採用におけるミスマッチを防止するために、社員の知人や友人を対象としたリファラル採用に注力しています。
中途採用におけるミスマッチ防止は、即戦力人材を採用したいと考えていることの証です。即戦力人材は採用後に再教育をする必要が無く、採用直後から戦力として貢献してくれる人材のことです。
即戦力人材は採用する側の期待を上回る高い能力を持っていることがあります。高い能力の裏付けには前職での実績があり、自負心が高い人材であることが想定されます。このような即戦力人材を活用するためには、職場の管理職にも一定以上の能力が期待されます。また職場の管理職が即戦力人材を活用するためには、採用決定後のみならず、採用準備段階から関与して、役割を発揮することが必要です。
◆適材適所と組織文化の関係
即戦力人材の必要性はジョブ型雇用に対する注目と結びついています。ジョブ型雇用は必要な能力要件を明確して職務記述書を作成することで成り立ちます。4年前に感染症対策としてテレワークの導入が検討されました。テレワーク導入準備にはジョブ型雇用が必要という考えから注目度が高まりました。ジョブ型雇用の導入のために、必要な能力要件を明確する過程で職場の管理職の関与が必要になります。さらに即戦力人材が自らの職場で必要であること、必要性を人事部門に伝えて採用準備を促すこと、面接などの採用過程で協力すること、採用後は即戦力人材が能力を発揮できる機会を設定することが、職場の管理職の役割として期待されます。
即戦力人材を長期的に活用できてこそ職場定着に成功したことになり、適材適所が実現できたことにもなります。適材適所を実現するには組織文化が重要です。組織文化とは組織内で共有されている価値観であり、意思決定や行動の拠り所になります。適材適所を実現するには人材活用を促す前向きな組織文化をつくることが必要です。前向きな組織文化をつくるために職場の管理職、人事部門、経営者の三位一体での協力が必要です。即戦力人材が職場定着することにより適材適所を実現するために、前向きな組織文化をつくることが期待されます。
以上